みみの病気
中耳炎
鼓膜より奥の中耳腔という空洞内に炎症が起こった状態で、急性中耳炎、滲出性中耳炎、慢性中耳炎、真珠腫性中耳炎など異なった病態の疾患が含まれます。 このうち一般に小児によく認められるのが急性中耳炎と滲出性中耳炎です1. 急性中耳炎
風邪などで細菌・ウイルスが鼻の奥で増殖し耳管という鼻と中耳腔をつなぐ空気抜きの管を通じて耳に侵入し、炎症を起こしたものです。多くの場合は直接耳に細菌が侵入したのが原因ではなく、鼻からの経路で感染が起こります。生後3歳までに8割のお子様が1度は急性中耳炎になるといわれ、珍しい病気ではありません。
耳の痛み、発熱、耳を触る、機嫌が悪い、耳だれなどですが、典型的な症状が出ない場合もあります。
細菌に対しては抗生物質、鼻のシロップなど薬の内服治療が中心となります。
使用する抗生剤の種類や量、期間には耐性菌を作らないように細心の注意が必要です。
鼻を吸引する処置や、ネブライザーを行うなど粘り強い治療も大切です。
小さい子供さんの場合は免疫力が十分でなかったり、周囲からの感染で急性中耳炎を繰り返すことがあります。そのような場合も年長になるにしたがい、中耳炎になる機会は減ってくることが多いので幼い時期を丁寧な治療で乗り切りましょう。
2. 滲出性中耳炎
炎症などにより生じた液が鼓膜の内側にたまって長時間経過した状態が滲出性中耳炎です。
痛みは無く、液が溜まっているため耳閉感や聞こえにくさが持続します。
鼻炎や副鼻腔炎など感染の原因がある場合には抗生剤治療を行い、アレルギー性鼻炎など耳管の働きを妨げる状態がある場合にはその治療を行います。
特に長期に治りにくい場合は耳に麻酔を行い、鼓膜を切開し排液を行う、鼓膜換気チューブをいれる等の治療していく必要がある場合もあります。
長期にこの状態を放置すると、難聴が続くことで学習の妨げにもなりかねないので辛抱強く適切な治療を行うことが必要です。
3. 慢性中耳炎
中耳に炎症を繰り返したために鼓膜に穴があいたまま残ることがあります。
本来無菌であるべき鼓膜の内側に鼓膜の穴から細菌が感染すると耳だれをきたします。また本来自分が持っている聴力よりも聞こえが悪くなっていることあります。自覚症状がないこともあります。
耳洗浄するなどの外来処置が必要です。また再発や難聴の改善のために手術が望ましいこともあります。
4. 真珠腫性中耳炎
真珠腫と呼ばれる、白色の組織が鼓膜の内側に入り込んでしまったために起こる炎症です。
難聴や耳だれ、痛みなどが挙げられますが、自分では気付かないことも多くあります。
真珠腫が耳の奥の方に進んでいくと頭蓋内に侵入することもあり、顔面神経麻痺やめまいの出現、神経性難聴の進行など重症化してしまう恐れがあります。
多くの場合、CTなどの画像による詳細な検査のあと、手術による真珠腫の完全除去が必要になります。このため治療には早期診断が重要です。
めまい
色々な病気がありますが、最も頻度の高いものは良性発作性頭位めまい症です。内耳の三半規管には耳石器があり、体のバランスを保っています。耳石器の石のかけらがはがれ落ちて三半規管のなかに入り込んでしまった状態がこのめまいの原因であるといわれています。からだの動きに合わせて三半規管の中にある液体が耳石と一緒に激しく移動するため、三半規管は(体が激しく回転している)と間違って感じてしまうことでめまいがでます。
「起きた時や寝たときに一時的にひどいめまいがする。」、「特定の向きに寝るとめまいがする。」「寝返りをするたびにめまいがする。」などの症状が出ます。多くの場合はじっとしていると1分程度でめまいが収まり、また動くとめまいがするという症状が起こります。
耳を観察し鼓膜に異常などのないことを確認し、聴力検査を行い、めまいのチェックとして目の動き〈眼振〉なども確認します。難聴や耳鳴りなどの聴覚の症状は起こりません。
症状が強いときはめまいや吐き気を抑える内服薬も処方しますが、良性といわれるように、比較的早いうちにめまいはなくなり、自然になおることもよくあります。めまいが少し軽くなってきたら、積極的にめまいが起こりやすい頭の位置をとる、しっかり頭を動かし位置を変えるといったリハビリテーションをすることが、治癒を早めます。また典型的なめまいの出方をする方は、頭位治療と呼ばれる、遊離した耳石を元にもどす方法を一緒に行い、改善する場合もあります。
メニエール病との違いは難聴や耳鳴りなどの聴覚の症状は伴わないことです。
突発性難聴
突発性難聴とは、ある日突然、何の前触れもなく、通常片側の耳が聴こえなくなる病気です。難聴の発生と前後して耳鳴りや、半数程度の方にはめまい、吐き気、嘔吐を伴うこともあります。原因としては内耳血流の循環障害やウイルス感染説が考えられていますが、いまだに特定はされていません。
耳を観察し鼓膜に異常などのないことを確認し、聴力検査を行います。めまいのチェックとして目の動きなども確認します。
ステロイドホルモンの漸減療法を点滴もしくは内服で行います。
正確な診断と早期治療が重要です。治療開始は早いほど良く、遅くとも1、2週間以内に治療することが望ましく、1か月以上経過していると、治療困難になると考えられています。突発性難聴は、治療により必ず治る病気というわけではなく、治る場合と治らない場合がありますが治療開始時点でそれを確実に予測することはできません。
また通常再発はしないとされていますので難聴を繰り返した場合は違う病気を想定していく必要があります。
メニエール病
めまいの病名としてはとても有名で、難聴、耳鳴り、めまいを繰り返す病気です。めまいは激しく、10分程度から激しいときは数時間持続することもあります。
原因は内耳のリンパ液が過剰な水ぶくれになった状態にあるといわれています。内リンパ水腫になるかははっきりとはわかっていません。
まためまい発作を繰り返す間隔は毎月~数年に1回など、人により様々です。
眼球を観察して眼振という眼球の異常な動きを確認し、聴力検査により病因となった側の聴力低下を確認します。
強い発作で嘔気が強く、薬を飲む事も出来ない時は安静の上でめまい止めの点滴を行います。内服が可能であれば、内リンパ水腫を改善するためイソソルビドという利尿剤を内服します。これに循環改善薬・ビタミン剤などを組み合わせて使用します。
耳鳴り
耳鳴り(ジー、キーンなど)の場合は難聴を伴う内耳疾患(突発性難聴、メニエール病、老人性難聴など)、中耳疾患(急性中耳炎・慢性中耳炎など)が考えられたり、まれですが腫瘍性疾患(聴神経腫瘍など)、またその他、心理的なものや原因不明のものもあります。治療は原因疾患や病状に合わせて行います。